中国のサービスロボットベンチャー企業であるKeenon Roboticsが、シリーズDの資金調達を実施したことを発表した。リードインベスターはソフトバンク・ビジョン・ファンド2となっている。

2億ドル(約219億円)もの巨額資金調達

Keenonの発表によると、今回の資金調達金額は2億ドル(約219億円)となっており、その資金調達規模は巨額となっている。Keenonは、これはサービスロボットセクターでは史上初の規模と主張している。

(補足)サービスロボットの定義がやや曖昧であるが、筆者の記憶では、Keenonの主張とは違い、実はこれは史上初ではない。中国のサービスロボットの先駆者ともいえるのはUBTECH Roboticsであり、2018年に実施したシリーズCでは、Crunchbaseによると実に820m$(約900億円)にも上る資金調達を実施している。UBTECHについてはまた別の記事で取り上げたい。

ソフトバンクは、今回が同社への初めての出資ではなく、2020年にSoftBank Ventures Asiaを通じてシリーズCから資本参加している。今回は、その時より大きく規模を拡大して資金調達ラウンドを実施した形だ。

Keenon Roboticsが手掛けているのは、自動配膳ロボット、自動案内ロボット、オフィス・ホテル用配送ロボット、自動消毒ロボットなど、様々な作業を自動化するためのロボットである。とりわけ、飲食店での配膳ロボットとしての利用の実績が多く紹介されている。

同社公開の動画への直リンク

ソフトバンクグループのマネージングディレクターの松井健太郎氏は、今回のリリースにあたってこう述べている。

「KeenonはAIと機械学習を使用し、高度な製造能力と組み合わせることで、革新的なロボティクスを構築し、中国をはじめとする世界のレストラン、ホテル、病院の生産性を増大させることに役立つ。」

例えば同社の自動配送ロボットは、マルチセンサーと最新のSLAM技術で、停止位置の誤差は10mm、自律走行を実現し、障害物を自動回避することができる。自動充電可能でエレベーターの乗降機能も備えている。

人手をかけていた業務を自動化

Bloomburgでは、「ソフトバンクワールド2021」で孫正義社長の講演で、Keenonについて世界で2万台以上のロボットが販売されており、「アルバイトの人件費よりも安い」と語ったと報じている。

こうしたサービスロボットの市場は現在拡大している。

日本ロボット工業会の記事によると、世界の業務用サービスロボットの売上高(2018-2019)は、前年比32%増の112億米ドルとなっており、市場全体は成長している。とりわけ成長しているのは物流や医療など、その業務効率化や高度化に対してインパクトがある領域である。Keenonの現在の主戦場である配膳ロボットという市場が、どのように立ち上がっていくのか、今後の展開に注目だ。

 

Keenon RoboticsのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
これまで人手をかけていた部分をロボットで代替することで、効率化の価値を提供するというのは、ソフトバンクがペッパーで失敗した反省を活かそうとしているようにも見えます。日本のサービスロボットの発想は「人型で何でもできる」というユニバーサルな機能設計イメージから入ったことで、顧客のペインの解決ができずにことごとく失敗してきました。一方でサービスロボット市場は、こうした実用的に価値がある特化型ロボットから商用化に成功しています。他にも今後、調理を自動化するロボットなど、様々な特化型ロボットが実用化するでしょう。

【世界のサービスロボットの開発動向に興味がある方】

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