Baidu(バイドゥ)が、中国の自動車・ロジスティクス向けの金融事業を行うLionbridgeと設立したジョイントベンチャーであるDeepWayを通じて、自動運転トラックに参入することを、9月17日に発表した。

高スペックのハードウェア

今回発表されたのは、スマート新エネルギー大型トラック「Xingtu」である。

今回発表されたハードウェア面でのスペックの特徴は以下の通りとなっている。Baiduが力を入れているだけあって、高スペックな内容だ。

  1. チップ能力:500TOPSを超える処理能力
  2. センサ  :10台のカメラ、5台のミリ波レーダー、3台の赤外線センサを搭載
  3. デザイン :軽量統合バッテリーとシャーシデザインを採用、風の抵抗を大幅低減
  4. 電池   :カスタム開発された450kWhバッテリーパックを搭載
  5. 充電方式 :1時間で充電可能、バッテリースワップにも対応
  6. HMI   :音声アシスタント、大型タッチスクリーンインフォテインメント搭載

センサについては通常自動運転トラックで搭載されているLiDARが使われていない点に特徴がある一方で、3台の赤外線センサが搭載されている。赤外線センサは可視光に比べて夜間でも見える、温度情報が得られる、煙や霧などを透過しやすいなどのメリットがあり、今回、夜間でのロバストな知覚性能を実現するために採用されたと見込まれる。

これらのセンサに加えてBaiduの高度なアルゴリズムによって、知覚から計画まで100ms以内でエンドツーエンドの自動運転を実現し、1kmを超える超長距離検出を実現するという。(ただし、1kmの超長距離検出というのがどの程度の反射率・色・大きさなどの物体を想定しているのかは不明)

また電動化の観点では、今回発表された電池パックはXingtu向けにカスタム開発されており、450kWhの電池パックは、49トンの全負荷時で、1回の充電で最大300kmを移動できる。充電も可能だがバッテリースワップにも対応しており、これはDeepWayが独自に開発したものであり、交換は6分で完了することができるという。

L3から始まり3~5年後にL4を実現

このXingtuというトラックは、Baidu Apolloの自動運転プラットフォームを搭載しており、第一世代は高速道路における貨物運搬において自動運転レベル3を実現する。そして、2024年から26年の間に、同じ高速道路の貨物運搬ルートで、自動運転レベル4を実現するように設計されているという。

DeepWayは、スマート新エネルギー大型トラックの研究開発と製造に焦点を当て、今後数年間で中国のトラック貨物業界におけるL4自動運転技術の商業化を促進する予定であることも明かした。

相次ぐ自動運転トラックへの参入

自動運転技術の短期的なマネタイズ先として、自動運転トラックが期待されている。これまで自動運転システムを開発してきた企業はこぞってトラックや配送の分野に技術を適用しようとしている。

Waymoは2020年にWaymo Viaを立ち上げ、自動運転トラック分野に参入し、積極的に活動を拡大させている。

参考:Waymoがトラック事業を強化、ハブ建設とメンテナンス面での提携を発表

また、今度SPACで上場するAurora Innovationは、2023年後半を目途に自動運転トラックを商業化することを明らかにした。

参考:自動運転AuroraがSPACで上場、2023年後半にトラックで商業化

さらに、今年に入ってシリーズAで一気に100億円弱を集めて注目を浴びた、トロント大学コンピュータサイエンスの教授でAIのパイオニアであるUrtasun氏が立ち上げたWaabiも、自動運転技術の最初のアプリケーションは長距離トラックであると明言している。

参考:カナダの自動運転ベンチャーWaabiがシリーズAでUberやAuroraの出資を受ける

元々、自動運転トラックで開発を進めているTuSimpleやPlus.aiなども含め、自動運転トラック市場の競争は今後激化する見込みだ。

 


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参考:(特集) 社会実装が始まる世界のロボタクシー市場動向


ー 技術アナリストの目 -
Baidu Apolloの自動運転システムを使ったスマートトラックということで、これはかなりインパクトがあります。Baidu Apolloは約1,400万kmもの自動運転走行距離を記録しており、ADASでも実績があり、ロボタクシーでも先行しています。長距離トラックは常時走行することになるため、Baiduには増々走行データやセンサデータが集まることになり、将来的にHDマップの更新をクラウドソーシングなどで行うような方法を取ることがあれば、更に有効になる可能性があります。

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