大規模な脳に関する生理学的・イメージングのデータプラットフォームを構築しているベンチャー企業のRune LabsがシリーズAを実施し、22.8m$(約25億円)を調達したことが発表された。

今回の資金調達ラウンドは、シリコンバレーのVCであるEclipse Venturesをリードインベスターとして、既存投資家のDigiTx PartnersやMoment Venturesなども参画したという。

ヘルスケアデータプラットフォーム

近年、ヘルスケアデータプラットフォーマーという業態が複数立ち上がってきている。

例えば今年シリーズEを実施して話題となったEvidationのプラットフォームは、個人が保有する様々な健康データが登録されており、それらの大規模なデータ集合体を活用し、臨床研究などに活用されている。

参考:個人と企業を繋ぐデジタルヘルスプラットフォームのEvidationがシリーズEで167億円の資金を調達

Rune Labsはその脳に関するデータのプラットフォームを開発している。

脳データプラットフォームとは

Rune Labsは2018年10月に設立されたばかりの米国サンフランシスコに拠点を持つスタートアップである。2020年10月にもシードステージで5m$の資金調達を実施しており、それから1年でシリーズAへと順調に調達ラウンドを進めている。

臨床試験中および日常的な患者ケアの過程で、大量の脳画像と脳信号がキャプチャされているが、あくまでこれらは個々人のデータの計測に留まってしまい、データを活用しきれていない状況であった。そこで同社は、これらのデータを大規模に統合することで、医療技術を開発する企業・大学や、製薬企業が、神経学・精神医学で新しい治療方法などを開発するために使える様にした。

Rune Labsのパートナーと連携して、電気生理学的、または関連する時系列の脳データを、ビデオデータ、オーディオデータ、ウェアラブルセンサーからのデータとして収集する。そして得られた大量のデータに対するラベル付けやインデックス作成を自動化し、データセットを構築する。

そして、大規模なデータセットを処理するための、グループ統計処理からディープラーニングまで、脳データ用に最適化された、すぐに使えるWeb視覚化ツールが用意されている。企業や大学の研究者はこのツールを使って研究開発を促進することができる。

例えばパートナーには、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)やMount Sinai(ニューヨーク市の病院運営会社)、ベイラー大学、ブラウン大学などがいる。

Rune LabsのCEOであるBrian Pepin氏はこう述べている。

「私たちは、脳データを大規模に役立つものにするための道を歩み続けながら、主要な学術医療センターやバイオ医薬品企業との現在のパートナーシップを拡大し、新しいパートナーシップに従事することを楽しみにしています。」

 

Rune LabsのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
脳データプラットフォームというかなりニッチで変わったポジショニングですが、これまでにない大規模なデータセットとデータの前処理が終わった状態で開発者が脳データを使うことができるため、画期的であり、関係者からのニーズは強いものと想定されます。UCSFのRune Labsの共同研究者が、この臨床脳データがパーキンソン病のような脳疾患を理解および治療する能力をどのように変えているかを示す研究をNatureで最近発表しており、こうした事例が出てくると更に注目されるでしょう。

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