自動車大手のGM(ゼネラルモーターズ)が、自動運転ベンチャーのMomentaに300m$(約330億円)の出資を行ったことを、9月23日に発表した。

累計1,000億円以上の資金を調達

Momentaは2016年創業の中国の自動運転ベンチャー企業である。

Crunchbase上ではこれまでの資金調達額が700m$を超えており、今回の300m$を合わせると累積資金調達額は1,000m$(約1,100億円)を超える。

今年3月に実施したシリーズCでは、中国のSAICやトヨタ、メルセデスなどの自動車大手がこぞって出資を行っており、合計500m$の大型調達となっていた。今回の発表により、GMもこのMomenta陣営に加わったことになる。

参考:中国の自動運転ベンチャーMomentaのシリーズCにSAICやトヨタ、メルセデスらが出資

Momentaはいきなり自動運転レベル4を実現するのではなく、まずはレベル3までを実現するシステムを市場に展開しながら、大量の走行データを集めてアルゴリズムを改善し、レベル4を実現していくという「フライホイール戦略」を取っている(詳細は上記の過去記事参考)。

2022年には安全のための補完ドライバーのいない形で、一部のロボタクシー車両の試運転を行う予定だ。

GMは中国の自動運転市場の開拓を加速

今回のGMによるMomentaへの出資は、「将来の中国におけるGM向けの次世代自動運転技術の開発を加速すること」を目的としている。

GMは、2020~2025年にかけてEV・AV(Autonomous Vehicle)技術のエンジニアリングと資本に350億ドルを投資すると、今年6月に発表していた。中国では、EV・AV開発の設計・エンジニアリング施設を拡張し、Vehicle Intelligent Platformと5G接続サービスを介した無線ソフトウェアアップデートを配信する機能を劇的に向上させていく。

GM ChinaのプレジデントであるJulian Blissett氏はこう述べている。

「中国の顧客は、電動化と高度な自動運転技術を世界のどこよりも早く受け入れています。GMとMomentaの合意により、中国の消費者向けにカスタマイズされた次世代ソリューションの展開が加速します。」

 

MomentaのHPはこちら


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ー 技術アナリストの目 -
興味深いのは、GMは自動運転技術に関しては巨額の資金を投じて買収したCruiseを核にして考えているはずですが、中国市場向けではMomentaの技術を使う、ということを示唆している点です。GMは、元々はCruiseの技術によるロボタクシー事業を2019年に立ち上げたかったのですが、技術開発と当局の規制の状況から、実用化時期は見直しされることになり、現在もまだ明言されていません。そうした中で、中国市場では自動運転の実証も進み、想定より早く市場が立ち上がりそうだという判断があったと想定されます。また、Momentaの自動運転レベル3から先に立ち上げていく、という戦略も、GMの早期に中国市場で展開したい、というニーズに合ったのでしょう。

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