AIとロボット技術で省スペースかつ少ない環境負荷で効率的に栽培を行うことができる技術を開発しているIron Oxが、シリーズCで53m$(約58億円)の資金調達を実施したことを9月22日に発表した。

今回のリードインベスターは2015年にビルゲイツによって設立されたBreakthrough Energy Venturesとなっている。

水の利用量を90%削減

Iron Oxは2015年に米国サンフランシスコで設立されたベンチャー企業だ。今回のシリーズCの資金調達で、これまでの累計資金調達額は98m$(約108億円)となっている。

同社はAIとロボット技術を使った新しい温室栽培システムを開発している。種子から貯蔵棚まで、農業プロセスのすべてのステップを再設計し、栽培する植物が最適なレベルの日光、水、栄養素を確実に受け取れるようにする。

個々の植物は、常時栄養素・水位・温度・湿度の状態についてモニタリングされている。そして各々のパラメーターに応じて、Groverと呼ばれる植物を載せたトレイが、温室内を自律的にナビゲートし、植物成長モジュールとして日光や水、栄養などのインプットが最適化されるように温室内で再配置される。

また、収穫をするためのロボットハンドも使われており、収穫も自動化される。

同社が開発したロボット温室栽培システムの様子

同社公開の動画への直リンク

Iron Oxのシステムを使うことで、1エーカーあたり30倍の農産物を生成し、フィールドファームよりも90%少ない水を使用することができる。

サンフランシスコベイエリアで作物を販売中

Iron Oxは北カリフォルニアで農場を運営しており、今年の初めにテキサス州ロックハートの新しい535,000平方フィートの屋内農場に着工している。 

すでにサンフランシスコベイエリアの複数の小売店で、Iron Oxが栽培した作物を購入することができる。今年の後半から、新しいテキサス州の生産施設からの最初の収穫でも販売が開始される予定だ。

Waymoの自動運転テクニカルリードもジョイン

今年7月には、自動運転ベンチャーのWaymoのテクニカルリードを担当していたDavid Silver氏もジョイン。David Silver氏は、WaymoとGoogleで指導的役割を果たした後、Iron Oxの最初のロボティクスディレクターとして参加した。

「さまざまなロボットを連携させるという課題は、非常に魅力的です。モビリティ、操作、コンピュータービジョン、そして膨大な量の機械学習の可能性など、すべてが揃っています。」とDavid Silver氏は述べている。

今回調達した資金を活用し、研究開発を拡大し、製造スケールアップを加速し、米国全体で事業を拡大していく準備を行うという。

 

Iron OxのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
ほぼ完全自動化された温室栽培ということで、環境負荷が大幅に低減するというのが特徴ですが、2010年代前半に盛り上がった植物工場は必ずしも上手くいかないケースも多かった印象です。植物工場の時にあった議論は、効率は上がりますがコスト増は避けられないため、単価の高い野菜や果物しか採算が合わず、また生産した後の販売チャネルもKFSとなっていました。Iron Oxも構造は似ているものと想定されますが、それでも今回58億円を集めたというのは、何かしらブレークスルーがあった可能性もあります。

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