自動運転レベル3・4のトラックを開発しているPlusは、シリコンバレー発の中国ベンチャーだ。今年5月にはSPACでニューヨーク証券取引所に上場することも発表している。

自動運転トラックは、自動運転技術のマネタイズ先として有望視されている。Eコマースの世界的な成長から、ロジスティクス分野の配送量は年々増加しており、ドライバーの確保が難しくなっていることが背景としてある。

そうした中で、Plusは自動運転システムのPlusDriveの初期の生産バッチを、中国の大手トラックメーカーであるFAW(中国第一汽車集団 )に納入したことを最近発表した。

数千台の予約注文がある

今回FAWに納入をしているPlusDriveは、レーダー、LiDAR、カメラを搭載し、HDマップとディープラーニングを組み合わせた大型トラック向け自動運転システムとなっている。

今回発表されたプレスリリースでは自動運転レベルについての言及がないが、”driver-in autonomous truck”と表現されており、ドライバーの乗車を前提としている。また、SPAC上場について発表当時の資料からすると、まずは自動運転レベル3を実現するシステムおよびトラックの生産を2021年内に開始するとしており、今回FAWと実現するトラックはレベル3であると想定される。

参考:自動運転トラックを開発する智加科技(Plus.ai)がSPACでニューヨーク証券取引所に上場

すでにFAWは数千台の予約注文を受け取っているようであり、広州の物流会社であるGuangzhou Zhihongに加えて、数万台のトラックを運用している物流企業のRokin、Duckbillも顧客となる。

自動運転レベル3の位置づけは?

トラック業界では自動運転レベル3の位置づけについては、ドライバーの乗車が必要であり、運転中に目・手を離すことができるハンズオフ・アイズオフを実現するだけのレベル3は、その有用性について疑問視する見方もある。

今回のプレスリリースでは自動運転レベル3トラックを導入する予定の企業は以下のようにコメントをしている。

RokinのCEOXiong Xingming氏

「安全性、効率性、持続可能性を高めます。これにより、商用車のネットワークに多大なメリットがもたらされます。」

Guangzhou ZhihongのCEOであるLiu Zhiyuan氏

「トラック業界は継続的なドライバー不足に直面しているため、長距離トラックの安全性、効率、持続可能性を強化する自律型トラックの需要が高まっています。」

コメントからは、おおむね自動運転レベル3によって、長距離トラックの安全性を高めることができ、ドライバーへの負担を軽減することができると考えていることが伺える。

また、Plusからすると自動運転レベル3を早期に展開することは、膨大な走行データを蓄積し、自動運転レベル4に向けた開発に役立てることができる。Plusは実環境の大量の走行データを元に、機能の改良と安全性の証明を行いつつ、2024年末までにレベル4を実現する考えだ。

 


ー 技術アナリストの目 -
競合他社が最初から自動運転レベル4を狙って開発を進めることが多い中、Plusによる自動運転レベル3の生産は、商用トラックでどのように自動運転レベル3が受け入れられるか、という大変興味深い論点があります。FAWが生産する自動運転トラックの今後の状況も見ていきたいと思います。

【世界の自動運転トラックの技術動向調査に興味がある方】

世界の自動運転トラックの技術開発動向、実証動向ベンチマークなどの調査に興味がある方はこちら。

グローバル技術動向調査:詳細へ