Kodiak Roboticsは2018年に設立された貨物トラックの自動運転システムを開発しているベンチャー企業だ。同社は元GoogleやUber、Lyftなどの自動運転部門のベテラン達によって設立され、今年に入ってBMW i Venturesやブリヂストンアメリカからも出資を受けている注目企業である。

Kodiakはトラックの自動運転の中でも、特に高速道路におけるミドルマイル走行に特化して自動運転レベル4の開発を行っている。先端的なセンサースイートやチップを搭載した同社のトラックは、最近、第四世代の最新トラックについて発表した。

業界をリードする最新のセンサーシステム

Kodiakの第四世代トラックは、LiDAR、レーダー、カメラの自動運転に重要な一連のセンサを全て搭載している。

(補足)なお、全体のセンサ台数や構成について明確に説明されたものが無いが、断片的な情報を組み合わせると、LiDAR3台、4Dレーダー2台、カメラ3台という構成になっていると思われる。

LuminarとHesaiのLiDARを組み合わせ

LiDARは短距離向けと長距離向けの2種類を搭載しており、前方・側背面を監視する。搭載しているのは、Luminar TechnologiesのIrisと、Hesaiの360°メカニカルLiDARだ。

LuminarのIrisはポリゴンミラーを使ったLiDARで、反射率10%で250mの長距離検知を可能にする。量産時のコストターゲットは1,000$未満と言われている。なお、高反射率の物体であれば600m先の物体検知も可能であるという。第四世代では、前方監視用にIrisを1台搭載し、両側面にHesaiのメカニカルLiDARを合計2台配置する。

ZFが開発したフルレンジ4Dレーダーを2台搭載

そしてレーダーには、ZFが開発し、Kodiakの車両でテストを重ねてきたフルレンジ4Dレーダーを2台搭載する。

このレーダーは4つのMMICがカスケード接続され、合計192チャネルで構成されている。通常12チャネル(3つの送信機、4つの受信機)しかない中距離用レーダーに比べ、より高解像度での認識が可能となっているという。300メートル以上の距離、高さ、横方向の角度、および速度を測定可能であり、とりわけ垂直方向が追加されたことで、例えば橋の下で停止した車両や道路標識の下で路肩に乗った車両など、立体的な知覚シナリオを解決するのに役立つことができる。

同社のブログではこのように述べられている。

「このレーダー技術は、自動運転トラックを大規模に市場に投入するために不可欠であると考えています。ZFフルレンジレーダーセンサーの追加により、私たちの知覚システムは、過酷な気象条件でも最大350メートルの範囲で車両速度を正確に追跡できます。」

自動運転トラックは重量が重いため、乗用車に比べて制動距離が長くなる。そのため、長距離で正確なレーダーが必要不可欠であるとしている。

チップはNVIDIA DRIVE Orinを採用

また、各センサの処理を行うチップには、NVIDIA DRIVE Orinを採用する。

NVIDIA DRIVE Orinは250TOPSを超える計算パフォーマンスを備えており、近年Volvo CarsやZoox、SAICなどの次世代自動運転車両への採用も決まっている。正式な生産開始(おそらく2022年)するまでは、暫定的に現世代のNVIDIA DRIVE AGX Pegasusを使用してカメラからのデータを処理するという。

高速道路に特化した独自マップを構築

興味深いのはマップにおける工夫である。

自動運転レベル3以上を実現するにはHDマップが欠かせないと言われている。一方で、マップの作成およびその更新コストは実用化における大きな課題の1つとなっている。

しかしKodiakは「Sparse Map」と呼ばれる独自のマップ(および処理技術)を開発している。Sparseとは”まばらな、わずかな、希薄な”といった意味であるが、同社は従来のHDマップは使わずに、より解像度を落としたSparse Mapを使う。

「HDマップは都市部に比べると高速道路では有益性が低下します。建築物・カーブ・郵便受け・木などが無い状況では、高速道路のある地点は、次の瞬間と同じように見えます。」Kodiakはこのように述べている。「また、工事、車線の閉鎖、その他の要因により、突然一晩で建設ゾーンが現れることもあり、先週慎重に作成したHDマップは正確ではなくなります。」

この課題を解決するために、Kodiakは詳細すぎる情報を排除し、高速道路を走行するのに十分なデータのみを保持するSparse Mapアーキテクチャを構築。Sparse Mapは、大規模な専用のマッピングチームがなくても、作成と保守が簡単であると述べている。

ブリヂストンのスマートセンシングタイヤ

Kodiakのトラックではブリヂストンのスマートセンシングタイヤも活用する。

ブリヂストンのクラウドベーステクノロジースイートにより、コネクテッドカーのデータを活用して、タイヤの状態とメンテナンスを予測し、タイヤの寿命を最適化するという。

(補足)この件については、最近のプレスリリースでは詳細についてはKodiakから触れられていないが、ブリヂストンはタイヤのひずみから荷重と摩耗状態を推定するセンシング技術を2019年に発表しており、こうした技術が活用されるものと想定される。

2021年第4四半期から走行開始

今回の第四世代のトラックは、2021年第四四半期から15台が公道で走行を開始することも発表された。今後数年間で、同社は米国の南半分全体で、貨物の運搬が豊富な高速道路回廊にフリートを拡大することを計画している。

 

Kodiak RoboticsのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
Plus.aiやTuSimpleに比べるとやや事業化に向けた準備は遅れていますが、2018年に設立されたばかりであり、急ピッチで開発が進んでいる印象があります。特に高速道路のミドルマイル走行の自動化に特化していることから、HDマップに対する考え方など、他社と設計思想に違いがありそうです。まだ実証走行フェーズですが、来年さらに話題が増えそうな1社です。

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