うつ病のパーソナライズ治療を可能にするプラットフォームを開発しているGenetika+が、シリーズAを実施し、10m$(約11.3億円)の資金を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達ラウンドでは、ボストンを拠点とする精密医療にフォーカスしたVCであるGrey Bird Venturesがリードインベスターとなっている。

今回調達した資金を活用し、臨床試験の拡大、製造能力の向上、マサチューセッツ州ボストンでの臨床検査室の設立など、米国における事業開発を促進するとしている。

最適な抗うつ薬・薬剤の組み合わせを見つけるテストキット

通常、うつ病の治療では抗うつ薬・薬剤を様々に試しながら、自身にあった薬を見つけ出すという試行錯誤のプロセスが必要となり、このプロセスは数ヶ月から数年必要とすることがある。

Genetica+が解決しようとしているのは、この数か月から数年という試行錯誤の期間を無くし、特定の患者に最適な抗うつ薬または薬剤の組み合わせを見つけることを初期の段階で可能にすることだ。

同社が開発している技術は「Brain-in-a-Dishテクノロジー」と呼ばれ、単純な採血と血液分析によって、最適な薬を探索することができる。特許技術を使用し、70を超える承認された抗うつ薬と薬剤の組み合わせを、個々の患者の固有の神経学的バイオマーカーに対して迅速に判定する。また、患者の遺伝的および病歴と組み合わせることで、各患者に最適な薬剤または併用療法を予測することができる技術を開発している。

「初期に処方された薬が治療として成功するのは、全体の1/3しかありません。」と、同社は関連する研究を引用する形で述べている1)

プラットフォームとしての発展性を持たせる

またGenetika+は、今回のテストキットはその第一ステップであり、同社が開発するプラットフォームは、精神医学的および神経学的空間全体の状態に合わせた個別の解決策を開発していく、としている。

今後開発されるソリューションについては明らかにしていないが、プラットフォームとして今後、様々なパーソナライズ治療の解決策が開発されていく見込みだ。

期待されるメンタルヘルスのパーソナライズ治療

メンタルヘルスの新規治療方法についてのアプローチは、様々なベンチャー企業が行っている。

当メディアでも複数件取り上げているように、デバイスを介しての神経刺激によるうつ病症状の軽減・治療の技術や、オンライン上でのセラピストによるカウンセリングを行うプラットフォームなど、複数登場している。

参考:キリンがうつ病治療の臨床グレードホームケアデバイスのFlow Neuroscienceに出資

参考:オンラインメンタルヘルス治療のMeru HealthがシリーズBで約42億円を調達

参考:メンタルヘルスケアプラットフォームのTalkspaceがSPACで上場

こうしたメンタルヘルス領域の診断や治療領域というのは1つの大きなトレンドとなっている。

 

Genetica+のHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
当メディアでも、メンタルヘルス・うつ病における様々なデジタル治療のプラットフォームやデバイスによる神経刺激などの治療ソリューションについて取り上げてきたのですが、今回のポイントは「薬」というソリューションは従来のままで、最適な薬を初期段階で見つけ出すということに着目している点が新しいものとなっています。

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参考文献:

1) Trivedi MH, et al. Evaluation of outcomes with citalopram for depression using measurement-based care in STAR*D: implications for clinical practice. Am J Psychiatry 2006; 163:28–40