カメラベースでの自動運転システムを開発している英国のベンチャー企業のWayveに、オンライン食品向けサービスを展開するOcadoが出資をしたことが、10月6日に発表された。出資額は1,000万ポンド(約15億円)となる。

カメラベースの自動運転を実現するディープラーニング

Wayveは2017年にケンブリッジ大学のディープラーニング研究者によって設立されたベンチャー企業。

Wayveはカメラベースの自動運転を実現するエンドツーエンド(※1)のディープラーニングを開発しており、LiDARやレーダーなどの他のセンサーを使わないアプローチを取っている。また、通常自動運転に必須とされるHDマップも使わない。そのため、アプローチとしてはテスラの方式に似ている。

(※1)エンドツーエンドとは、入力と出力だけ渡して、途中で発生する処理全てを学習させることを指す。中間処理の学習を多段階で行う必要が無い一方で、大量の学習データが必要になる。

Wayveの自動運転システムにおけるインプットデータは、2.3MPの6つの単眼カメラ(25Hz)、ベーシックなナビゲーションマップ(HDマップではない)、GNSSから成る。システム構成はいたってシンプルだ。

「自動運転において次のシーンを予測することは、究極的にチャレンジングなことです。」

同社CEOのAlex Kendall氏は、CVPR2021のカンファレンスで語っている。

同社はカメラから得られた情報を元に、特徴量抽出を行い、そして鳥観図と言われる俯瞰的なデータに落とし込む。そして鳥観図に対してそれぞれのフレーム(時間)に変換し、時系列に連続したデータを予測モデルへ入力していく。

Wayveの推論モデルアーキテクチャ

引用:Predicting the Future from Monocular Cameras in Bird’s-Eye View(Wayve, 22/4/2021)

なお、同社はあくまで単眼カメラでセンシングを行っており、深さ方向の検出も単眼カメラで得られる画像からDNNで推測を行っている。

食品向けラストマイルで実験を開始予定

Wayveは、今回のOcadoからの出資および両社の提携により、複雑な都市環境向けの自律的な食料品配達の開発を加速していく。

具体的には、WayveのシステムをOcadoが保有する配達用バンに実装し、都市の配達ルートで試用される自律配達試験を行う予定だ。

Ocadoはオンライン食品サービス事業者向けに、オンライン食料品フルフィルメントソリューションを提供しており、Ocadoのリテールパートナー向けのOcado Smart Platformの提案をさらに変革していくことが今回の目的となっている。

またWayveは9月に、英国の「ビッグフォー」食料雑貨店であるAsdaとも提携を行い、食品配達のラストマイル走行でWayveのシステムを搭載した自動運転車両で実験を行うことを発表している。この配送実験は2022年初頭に開始する見込みであり、ロンドンの複雑な都市配送ルートで実施される。実験期間は12か月間と、長期間の本格的な取り組みだ。

Wavyeは、オンライン食品の自律配送を対象とした出口に向けた活動を活発化させている。

 

WayveのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
Wayveは上述したように食品配送の領域で複数の実証実験をこれから走らせることになり、短期的な出口としてラストマイルデリバリーを想定していると思われます。ロンドン市内を15分間走行する様子も公開しており、都市部での運用を意識しているようです。一方で、テスラが示すようにカメラベースでのADAS/ADは想定していない事象が発生し事故に繋がるケースも見られ、Intel/Mobileyeも来年から始めるドイツでのロボタクシー実証ではLiDAR・レーダーを使うことになりました。難易度の高い都市部で、Wayveがどのような落としどころに着地させるのかは今後の注目ポイントです。

【世界の自動運転関連技術やラストマイルの調査に興味がある方】

世界の自動運転関連技術(センサやAIなど)やラストマイルの取り組みに関する網羅的な調査やロングリスト調査に興味がある方はこちら。

詳細:先端技術調査・リサーチはこちら