背景

次世代電池の有力候補の1つとして、液系の電解質から固体電解質に代替した電池の実用化に向けて、大手企業やベンチャー企業が積極的に研究開発に取り組んでいる。EV向けでは大手OEMは軒並み全固体電池に取り組んでおり、ベンチャー企業と連携して研究開発に取り組む。また非車載向けでも実用化が模索されており、日本企業も商社や素材メーカーが同分野に投資を行っている。

ロングリストに含まれる技術群

このロングリスト(40社程度)には以下のベンチャー企業が含まれている。

全固体電池

  • 固体リチウムイオン電池(硫化物系、酸化物系)
  • 3Dプリンティング固体電池

半固体電池

  • 半固体電池(電解質がゲル状)

リチウムポリマー・有機無機ハイブリッド電池

  • リチウムポリマー電池
  • セラミックポリマー複合電解質リチウムイオン電池
  • 有機無機ハイブリッド固体電解質

その他固体電池

  • 大気圧プラズマ技術で製造可能な固体電極
  • 全固体スーパーキャパシタ
  • 固体塩化ナトリウムニッケル電池

調査概要

当社では現在、固体電解質または半固体電解質(ゲル状)、そして高分子ポリマー電解質、または有機無機ハイブリッド電解質を使った次世代電池を開発するベンチャー企業40社前後をリストアップして、その動向をモニタリングしている。

なお、このロングリストには電池開発ではなく、電解質のみを開発しているベンチャー企業も含まれている。

累積資金調達額上位ベンチャー

以下が先進リチウムイオン電池・部材ベンチャーの累積資金調達額TOP5となっている。

圧倒的に資金を集めるのはQuantumScapeであり、これまでに累積800m$以上の資金を集めている。次いでA123 Systemsが挙げられるが、同社は一度経営破綻し、万向集団の傘下として現在再建中となっている。なお、技術的にはIon Materialsの固体電解質を使った固体電池の開発を行っている。また、Solid PowerやProLogium等も大変注目されている。Solid Powerは最近、BMWとフォードから巨額の資金調達を行っている。またProLogiumはすでに小型のリチウムセラミック電池を実用化しており、ベトナムのVinFastと共同で車載向けの全固体電池の開発を進めている。

企業DB及び各社リリースより独自に調査・作成

主要ベンチャー企業の概要

(1) QuantumScape(米国)

  • 設立年       :2010年
  • 国         :米国
  • 資金調達フェーズ  :Post IPO Equity
  • 最新資金調達日   :2020年11月
  • 最新資金調達額   :500m$(Post IPO Equity)
  • 累積資金調達額   :800m$以上
  • 事業内容      :全固体リチウム金属電池の開発
  • URL        :http://www.quantumscape.com/

従来のリチウムイオン電池で使用されていたポリマーセパレーターを固体セパレーターに置き換えた電池を開発している。セパレーターの交換により、従来のリチウムイオン電池で使用されていたカーボンまたはシリコンアノードを、より高容量のリチウム金属アノードに交換することができるように。同社のセル設計は、バッテリーが放電状態でアノードフリーで製造され、最初の充電でアノードがその場で形成されるという点で「アノードフリー」設計となっていることが特徴とも言われる。

(2) A123 Systems(米国/中国)

  • 設立年       :2001年
  • 国         :米国(中国)
  • 資金調達フェーズ  :万向集団傘下
  • 最新資金調達日   :N.A.
  • 最新資金調達額   :N.A.
  • 累積資金調達額   :507m$以上
  • 事業内容      :LFP及びNMCを使ったLIBの生産とリチウムポリマー電池の開発
  • URL        :http://www.a123systems.com/

過去に大変注目されて期待されたリチウムイオン電池メーカー。経営破綻後、中国の万向集団(Wanxiang Group Corporation)が買収し、現在は中国企業傘下で活動。グリッドストレージ事業を売却し、EV向け電池の開発・製造に注力。ナノリン酸塩をベースとしたLFP電池と、NMCを使ったLIBを提供しつつ、IonicMaterialsへ出資を行い固体電池の開発にも注力している。なお、調達金額自体は大きいが、資金は経営破綻前に調達したものであり、現在は財務や調達情報などは公開されていない。

(3) Solid Power(米国)

  • 設立年       :2011年
  • 国         :米国
  • 資金調達フェーズ  :SeriesB(SPACで上場予定)
  • 最新資金調達日   :2021年5月
  • 最新資金調達額   :130m$
  • 累積資金調達額   :186m$(SPAC完了後に最大515m$の資金を追加調達予定)
  • 事業内容      :硫化物系固体電解質を使った全固体電池の開発
  • URL        :https://solidpowerbattery.com

2012年に設立されたSolid Powerは硫化物系電解質を使った固体電池を開発している。負極にはリチウム金属を使い、正極には直近はNMCベースという構成(直近で開発が進むのはシリコン負極)。5月にフォードとBMWからシリーズBで130m$を調達しており、話題となっている。6月にはSPACで上場することも発表。

参考:全固体電池のSolid PowerがSPACで上場し、最大約560億円の資金を調達

参考:BMWとフォードが全固体電池ベンチャーのSolid PowerのシリーズBに参画

(4) BrightVolt(米国)

  • 設立年       :1998年
  • 国         :米国
  • 資金調達フェーズ  :Early Stage
  • 最新資金調達日   :2019年1月
  • 最新資金調達額   :6.0m$
  • 累積資金調達額   :100m$
  • 事業内容      :リチウムポリマー電池の開発
  • URL        :https://www.brightvolt.com/

ポリマーマトリックス電解質を使ったリチウムポリマー電池を開発している。独自技術として、電極に直接結合して薄いポリマー層を形成することで、軽量で薄い電池を製造できるとする。2016年にシリーズBを行うも、その後しばらく調達が無く、2019年にConvertible Noteで6m$の資金を調達していることから、必ずしも開発が順調に進んでいたわけではなく、技術開発の方向性をピボットしているものと推測することができる。

(5) ProLogium Technology(台湾)

  • 設立年       :2006年
  • 国         :台湾
  • 資金調達フェーズ  :Late Stage(SeriesD)
  • 最新資金調達日   :2020年4月
  • 最新資金調達額   :100m$
  • 累積資金調達額   :N.A.
  • 事業内容      :リチウムセラミック電池の開発
  • URL        :http://www.prologium.com/

電解質に固体のセラミックを使う電池を開発・製造している。すでに非車載用では実用化済みで電池が製造販売されている。同社によると、EV向けの電池では、バッテリーセルのエネルギー密度は500~800Wh/Lを想定しているようで、ベトナムの国産OEMであるVinFastとEV向け固体電池の開発に向けた提携が発表されている。

参考:台湾の全固体電池企業ProLogiumがベトナム国産自動車OEM VinfastとJVを設立

参考:リチウムセラミックバッテリーを開発する台湾ベンチャーProLogium Technology

 


上記の固体電池・リチウムポリマー電池関連ベンチャーのロングリストや、技術動向調査に興味がある方は、お問合せよりご相談ください。(オンライン面談でのロングリストサンプルの閲覧も可能です)

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